お口の健康と体の健康には深いつながりがあります。
歯科疾患・お口の機能と身体の健康・介護予防等についてのご案内です。
現在、ご自分の歯は何本揃っているかご存じですか?
歯科疾患実態調査によると、1980年代以降、残存歯数は増加傾向にあります。 たとえば60歳前後(55~64歳)の場合、1975年では14本でしたが、2016年には24本まで増加しています。皆さんの意識と、 また、私たち歯科医も残す努力をした結果、ここまで良くなってきています。
日本人の食事は20本以上残していると、不自由なくたべられます。
最近身体も元気な高齢者が増えたことも、歯の残存数との関係が少なからずあると思います。「病気を予防する」ためにも、定期的な検診やクリーニングをしていきましょう。
『歯が痛くなったら歯医者に行く』
『歯が痛くなってから治療すればいい』
…という考えが、結局、ご自分の大切な歯を失う原因になってしまいます。
残念ながら治療したといっても、一度悪くしてしまった歯の寿命は短くなるのが現実です。
まずは、器具でお口の中を拝見し、レントゲン撮影や口腔内写真などで診査・診断し、『あなたに合った治療・予防プログラム』にそって実践すると、生涯を通して自分の歯を守ることは可能です。
虫歯(カリエス)は、幼児期やか学童期にかかりやすく、
成人が虫歯にかかる場合は、歯肉が退縮し、セメント質(歯根面)が
露出した部分におおくおこります。(=歯頚部カリエス)
歯周病とは、歯周組織の病気で,歯を支える組織を破壊してしまい、歯を失う大きな原因となっています。
これらの二大疾患の原因は『デンタル・プラーク』といわれる細菌群にによって引き起こされますが、その進行度や頻度などには個人差があり、その人の病原菌に対する抵抗力によって異なります。
あなたが疾患にかかりやすいか、かかりやすいとすればどのような要因があるのかを、正確に診査・診断することから治療と予防の第一歩が始まります。
年齢・歯の質・歯の生え方・細菌の種類と数・唾液など、いくつかの要因が重なったときに歯や歯周組織の病気にかかります。
予防は危険に応じて、危険性のある部分や
全身の状態などを知った上で行う事が効果的です。
予防の中心は、原因であるプラーク(歯垢)の沈着を抑制し、
悪影響を及ぼさない程度にコントロールすることです。
そのためには、歯科医院でなければできない知識や技術、器具を用いたコントロールと、患者さん自身による毎日の歯磨きなどのコントロール(ホームケア)の二つが必要です。
診査・診断をし、いくら『予防のプログラム』が作られたとしても、それを実行しなければ効果は全く上がりません。
虫歯や歯周病は、身体の抵抗力とのバランスに関連しているため、ホームケアを怠ると、細菌の活動は活発になり、発症してしまいます。
歯科の予防も、成人病の予防と同じように毎日実践してはじめて、効果があがります。
『自分の健康は自分で守る』という意識を大切にしてください。
そのための専門的なアドバイスやバックアップは、私たちが全力で行います。
当医院でお薦めする『虫歯予防効果の高い歯磨き粉・洗口剤』も紹介しております。
…せっかく治療に来たのに、歯磨きの方法を教えられてもね~…歯磨きはいいから治療をしてくれ…
そう思われるのは仕方のないことですが、歯磨きは手の洗い方みたいなもので治療ほど大事ではないと言うのは全然違います!!
確かに、歯肉のちょっとした腫れを気にせずに、虫歯や痛いところだけを急いでかぶせたり、削ったりし治療を早く進めて早く終わらすのは、患者さんにとっても歯科医院にとっても負担が少なく済みますが…虫歯や歯周病の危険性を一気に高めてしまう原因になります。
虫歯も歯周病も、お口の中の細菌が異常に増えた結果生じるもので、治すには原因を除去することが一番大切です。
まず大事な事は、虫歯はバイ菌(細菌)の感染によって起こる…という事です。つまり「虫歯は細菌が作る」ということです。
お口の中には、常に数百種類の細菌が共存していて、身体の中で特に菌密度が高い場所になります。
ただ、どの細菌にも手足はありません。そのままでは歯にしがみついていられないので、唾液の大波がくると洗い流されてしまいます。
また、どこででも生きてゆくことが出来るわけではありません。
…では、どうやって歯に付着するのでしょうか?
【お口の中の細菌は付着力が弱い】
そこに食べ物などの『砂糖』が存在すると、水不溶性グルカンというベタベタとした粘着性の多糖類が細菌によって2~3時間で合成されます。グルカンが出来てその中で細菌が増殖し始めると、除去するのが困難となり、不適切な歯ブラシでは十分にきれいにならなず、増殖した細菌や死骸などが歯の表面に積もっていきます。
十分な歯ブラシをせずに放置すると、3~5日で熟成した【プラーク(歯垢)】になります。
プラークとは、細菌と細菌の生産物が絡み合った物の事をいいます。
プラークの中に存在する【虫歯の原因になる細菌】は、糖分をもとに『酸』を作り、 人体でもっとも硬い組織である歯の表面を溶かしてしまいます。=虫歯
人間の体には、この酸と戦おうとする抵抗力があり、人によって程度の差はありますが、唾液や歯の質などがその力です。
しかし、酸にさらされる回数が多かったり、時間が長かったりすれば、酸との戦いに敗れ、虫歯になってしまいます。
つまり、時間と体の抵抗力の戦いとも言えます。
…そこで、虫歯予防には次の点が大切になってくるのです。
乳歯の奥歯が大きな虫歯になると、冷たい水を飲んだ時や食事の時に痛むようになり、食事が楽しめなくなったり、偏食のきっかけになったり、口臭の原因にもなり、ひどいときには食事の量が減ってきたりします。
重症になって乳歯が抜けてしまうと、その後に生えてくる永久歯の色が茶色や黒色に変わったり、かたちが本来の永久歯と違って変なかたちになって生えてくる事があります。
また、乳歯が早く抜けてしまうと、その隣にあった歯の場所がずれてきて、将来の永久歯が生えてくる場所を狭くしてしまい、不正な歯並びの原因になってしまいます。
虫歯は一度できてしまうと自然には治らない病気です。
虫歯菌で壊された歯の色やかたちは自然に戻ることはありません。
ですから、虫歯に対しては【予防】が一番大切なのです。
一般に永久歯は乳歯に比べて丈夫で、特に歯の表面の硬いエナメル質は乳歯の倍ほどの厚さで、石灰化が強く、様々な外界の刺激に抵抗できるようになっています。
虫歯の進行も乳歯ほど早くはありませんが、生えたばかりの永久歯は虫歯になりやすいです。
成人期では、どちらかというと歯の表面よりは『歯と歯の間』『歯と歯肉の間』など見つけにくい場所に多くみられ、しかも進行した状態で発見されることが多いようです。
歯周病や歯ブラシの過剰な圧力のかけすぎなどにより、歯肉の退縮が起きると『象牙質』が露出してしまい、冷たいものや歯ブラシでしみたりすることがあります(知覚過敏症) 象牙質は、エナメル質よりも酸におかされやすいため、虫歯になりやすいです。(根面カリエス)
歯根面露出部の虫歯発症で留意しなければならないことは、エナメル質の虫歯と異なり、弱い酸でも脱灰が生じる点です。
食事とPH(ペーハー)の関係
食事をとるたびに、お口の中は数分で酸性になり(PHが低くなる)、歯の表面から硬い成分である、ハイドロオキシアパタイトが溶かされ始めます(脱灰)。 40分位時間がたつと、中性に戻り、溶かされていた歯の成分はもとに戻されます(再石灰化)。
当医院では虫歯の発生・進行を予防しながら殺菌、歯石の原因の除去に効果的なケア用品を『ホームケア用品』にて掲載しています。
人間のもっている虫歯に対する抵抗力のうちで、もっとも大きな力は『唾液』です。
唾液の作用には次のことがあります。
洗浄作用 | 唾液は歯面やお口の中を洗浄します。 |
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殺菌・抗菌作用 | 唾液中の免疫抗体、リゾチーム、ペルオキシターゼ、ラクトフェリンなどに抗菌作用がありプラークの形成・発育を抑制します。 |
緩衝作用 | お口の中の酸・アルカリを中和させます。 |
抗脱灰作用 | PHを高めて、歯の溶解を低下させ、エナメル質・象牙質の再石灰化を促進させます。 |
唾液はこのような優れた働きをしていますので、分泌量が多いほど、虫歯予防の効果は高くなります。
フッ素は虫歯予防に、次の4つの働きをします。
フッ素は再石灰化を促進し、エナメル質の表面にフルオロアパタイトを生成して、よりよい耐酸性の高いエナメル質を形成します。
また、プラーク中の細菌の酵素を阻害する働きがあるため、酸の産生も抑制します。
唾液の中には、リンやカルシウムが溶けていて、それが歯の中に取り込まれたり(再石灰化)、歯から奪われたり(脱灰)しています。フッ素は、この再石灰を促進し脱灰を抑制します。
この病気は、歯の表面に付く細菌の塊(プラーク)による炎症で、歯を支えている歯肉や歯槽骨が細菌の産生する毒素によって破壊されていきます。
歯を支える骨が失われれば、当然の事ながら歯はグラグラと動揺してきます。
動揺をはじめた歯をそのままにしておくと長持ちしません。
そのうちひどく腫れたり、痛みが強く出てきたり…最終的には抜けてしまう病気です。
歯を失う原因の多くは、この歯周病です。
歯周病の細菌は歯と歯肉の境目に生息しています。
この細菌は、歯肉の炎症を起こすような様々な物質を産生し、さらには骨を吸収してしまう結果にもつながってくるのです。
また、これらの細菌は歯石(硬い石のような物質)を作る原因にもなります。
歯周病の怖いところはある程度進行してこないと、自覚症状が現れないということです。
したがって、病気になっていてもそれほど進行していない20歳代や30歳代では気付かず、40歳代ではじめて病気に気付く事が多いのですが…すでに病気が進行している段階です。
…このような症状が一つでもある人は、程度の差はありますが歯周病の恐れがあります。
該当する症状のある方は検査することをお勧めします。
『口腔内の健康』と『介護予防』は大きく関係しています。
いつまでも心身ともに健康で、明るく楽しく暮らしていくには、今から何を考え実行していったらよいのでしょうか…。
いつまでも健康で生き生きと暮らしたい…。
そのためには日常生活や気の持ちようを工夫し、寝たきりにならない、介護を必要としないよう心身の衰えを予防することが必要になります。
そのような取り組みを『介護予防』と呼びます。
あなたは毎日、きちんと噛んで食べていますか?
きちんと噛んで食べることは、唾液を多く分泌させ、食べ物の消化を促進し、口腔内を清潔に保ち、脳の活性化を促し認知症(痴呆)を予防する、など身体に対して多くの好影響を及ぼします。
よく耳にする【8020運動】(→80歳になっても自分の歯を20本残す)の目的はただ単に多くの歯を残すことだけでなく、高齢期になっても何でも食べられる良好な咀嚼機能(食べる機能)を維持することを目的としてます。
しかし、現実には歯や義歯の調子も良く、食事の時何でも良く噛める人はどのぐらいいるのでしょうか…?
咀嚼機能が低下し“食べられない”“噛めない”ことが多くなり、軟らかい食品を摂取し、結果『食欲の低下』を招いてしまいます。
軟らかいものばかりではなく、歯ごたえのあるものを食べるようにし、よく噛みましょう。噛むことで顎の筋肉が鍛えられて咀嚼機能が高まります。
歯が抜けてしまうと咀嚼機能が低下するだけではなく、残った歯にも影響し、全体の噛み合わせのバランスが崩れていしまいます。歯が抜けた部分は放置せず相談してください。
虫歯や歯周病で歯が抜けてしまうのを防ぐため、1日1回は十分な時間をかけて、自分の歯を磨きましょう。歯並びは一人一人違うので、自分に合った方法を歯科医院で確認しましょう。
歯医者は痛い・辛い・怖い、というイメージが強い方も多いと思いますが、定期的に歯科を受診すれば、虫歯や歯周病も早く発見でき、歯石を取るクリーニングもできます。入れ歯もこまめに調整できます。
『痛いから行く』から『健康を保つ』ための歯科に変えてはいかがでしょうか?
虫歯・歯周病の原因であるプラーク(歯垢)。
このプラークの中にはさまざまな菌が生息しています。
その中の歯周病原因菌には、タンパク質分解酵素などを作り出しているものがあります。
これらの酵素は、《のど》の粘膜表面にインフルエンザウイルスなどを付着させやすくしてしまう可能性が指摘されており、健康高齢者の方においても大きな問題となってきます。
それだけでなく、プラークの中の細菌は慢性感染症として、全身的にも様々な疾患を引き起こす原因になります。
例えば重度の要介護者の場合…全身的な免疫機能の低下、嚥下反射(飲み込む力)や咳反射が低くなってしまう、口腔内にたまった細菌の誤嚥などにより健康な状態より免疫力が低下しているため肺炎になってしまう可能性が高くなります。
しかしこれらは、重度の要介護者だけではなく、発症率は低くなるものの、比較的症状の軽い要介護者(「要支援」「軽度要介護者」)の方にも可能性があることがわかってきています。
歯周病と関連が深いと考えられている全身の病気として、リウマチ、誤嚥性肺炎、心内膜炎、動脈硬化、糖尿病、早産・低体重児出産、敗血症等が挙げられております。
今後さらに多くの病気との関連性が解明されることと考えられます。